レース用ドローン製作講座体験レポート【2日目完成機体でフライト@千葉】

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2日目はドローンの頭脳となるソフトウェアの設定から

2日目は、千葉市郊外に場所を移します。会場の「Sky Game Splash」はJapanDroneLeagueのレースも行われるドローン・エアレース・サーキット。晴れ渡り、風も穏やかで絶好のドローン日和です!

午前中はドローンを制御するソフトウェアの説明から始まりました。テキストに沿って、ソフトウェアで設定する各項目の意味を学びます。この日は、必要な設定についてはもちろんのこと、普段は使用しない設定についても学びます。設定を誤ると暴走して危険が伴うものや、使用ができなくなってしまう設定もあるためです。

冒頭、中村講師から「最初は知らない言葉も多いですが、少しずつ覚えながら上達していく過程が楽しいものです。ソフトウェアの設定は、特に楽しいと思いますよ」というメッセージがありましたが、その言葉を聞いたときは、その発言の意図することを理解できませんでした。しかし、ドローン制御のしくみを聞くにつれ、なるほど奥深いものだという感覚をつかむことができました。

ドローンの操縦は、「プロポ」と呼ばれる送信機で行います。ゲーム機でのコントローラーのような位置づけです。このプロポのレバーを倒す量でドローンに指示を与えるのですが、プロポをどれぐらい倒すとどう反応するのか、その強弱までもプログラムで自分好みに設定することができます。

ここで重要なのは「PID」の考え方。Proportional(比例)、Integral(積分)、Differential(微分)によるフィードバック制御の一種で、自動車の制御や、化学プラントの配管などプロセス産業でもよく使われる制御方式です。ドローンは3軸方向のそれぞれで、このPID制御を行っており、平たく言うとこの制御システムは「角度を変えたいときに変える」「何も指示しないときには角度を維持する」ためのものです。うまく制御できずに悩んだとき、まずはPIDを疑ってみるべきだという、経験をもとにしたアドバイスがありました。

プロポからの入力指示と、実際の姿勢との差を確かめ、予測しながら機体自身が微調整を繰り返して行きます。

各パラメータの値が複雑に影響し合うため難しいのですが、設定とフライトを繰り返しながら仕上げていくところに奥深さがあります。冒頭「ソフトウェアの設定は楽しい」という講師の方の発言がありましたが、その「楽しさ」の正体はまさにこの試行錯誤なのだと思います。講座ではPIDなどを実際に調整するところまでは行いませんが、ドローンレースにおける手足の動かし方を変える方法を知っておくことが重要なのは言うまでもないでしょう。

ドローンを安全に扱う要はバッテリーと充電!

続いては、充電器の使用方法についての説明です。

同じくリポバッテリーを使用するスマートフォンや既製ドローンなどには、ユーザーが意識しなくても安全に充放電できる仕組みが備わっていますが、自作したレース用ドローンでは充電器の操作からバッテリーの管理の方法まで知っておく必要があります。充電器の設定や接続の手順を誤ると、発火や感電といった事故につながってしまうため、一人ひとりが講師の前で実際に充電器を設定し、手順を追って充電と放電の接続を実際に行います。

みなさんバッテリーについての関心は高く、現役レーサーとしてどのような管理をしているのか、講師陣への質問が続きます。夏場は特に注意が必要で、保管時の充電は容量の半分程度にとどめておき、レースの前夜に満充電にして、サーキットへ向かう車中での梱包や空調にも気をつけているとのこと。バッテリーに関しては、慣れてきた頃に何かしらの失敗をしがちなので注意が必要だと言います。重要なことなので、私も険しい表情で聞き入っていました。

いよいよプロポとドローン本体の接続設定

休憩を挟んで、午後はプロポと機体が1対1で認識するように接続設定します。
続いて、午前中の知識をもとにプログラムを設定していきます。今回使用するのは「BETA FLIGHT」というファームウェア。パソコンと機体を接続し、設定画面に値を入力します。

誰もが調整しないといけないのは、このドローンが何個のモーターで動き、どんな形状をしているかという基本設定です。

つぎにプロポの項目です。既製品のプロポでも個体差があるので、まずは機体と正確に連動するよう、フラットな状態になるようにします。

そして私の場合は、1日目のテストで4つのモーターが全部同じ方向に回っている問題がありました。2つの回転が逆になるよう変更し、危険なのでプロペラを外した状態で、実際にモーターの回転を確認。これで飛ばせる準備は整いました。

ついに自分で作ったドローンが空を飛びます!

いよいよ、フライト。3人ずつ3つのグループに分かれ、1人3分~5分程度で交代しながら飛ばします。

プロポには数種類のモードがあり、外観は同じでも異なる指示が送信されます。今回は申込時にモード1と2を選択しており、モード1が1グループ、モード2が2グループ、それぞれの使い手である講師の指導を受けます。鮮やかなデモフライトを披露してくれた講師ですが、モードが違うと勝手が違うので、離陸すらおぼつかないのだそうです。

先に飛ばした仲間は、見事に上昇。持続するのは難しく、すぐに落ちてしまいましたが、それでも自分のことのように嬉しくなります。

いよいよ自分の順番が近づいてきます。普段使っている空撮用ドローンは、制御システムをオフにしてもなんとかそれなりに飛ばせるが、果たしてレース用ドローンではどうか。失敗したときに恥ずかしいので、他の受講者にはJUIDA(ドローン操縦技術の認定団体)のスクールを出たことは伏せてきました。

私はいつも落ち着いたそぶりでいるのですが、快晴の屋外に立ち、自分で組み立てたドローンが空を駆け回ることを想像すると、内心は興奮を抑えきれません。一方で、全員ネットの外にいるとはいえ、墜落や暴走の怖さもあります。プロペラガードが付いていないので、もし人に当たったらプロペラで大けがを負う可能性もあります。講師からは、墜落した場合などは電源をすぐオフにするようにと教わりました。そうだ、オフにすればいいのだと頭に刷り込むと、少し気持ちが楽になりました。

息を止めて、いざ離陸。ところが、これが難しい。まっすぐ地面から離陸するのも一苦労。なんとか上昇するものの、うまく制御できずあたふたしているうちに、墜落。すぐに電源をオフにします。

それでも、とにかく浮いたという事実が嬉しくてたまりません。他の受講者の皆さんに話を聞いてみましたが、昨日は部品だったものが集まって浮いているんだという感激は、私だけではなかったようです。

フライト後のメンテナンスもしっかりレクチャー

フライト後は「リポチェッカー」でバッテリーの残量が何%なのかを確認する癖をつけます。市販されているドローンのようにモニターがあってそこにバッテリー残量が表示されるわけではないので、どれぐらい残量が減るのか、感覚を養うことが重要です。

DJI社のPhantom(世界シェアNo.1メーカーの主力機種)とは全然違って安定しませんが、そもそもPhantomは空撮用機体なので目的が違います。逆に、この不安定さがレース用ドローンの面白さなのだと思います。

「ドローンは落としてはいけない」という固定観念がありましたが、レース用ドローンにおいては衝突や落下は当たり前で、そのために頑丈に作られています。そう思うと余計な力が抜けて、ずいぶん楽しめるようになりました。早速プロペラが折れた方もいました。フライトを繰り返し、土と草の緑に汚れてしまったドローンですが、これも勲章のような気がしてきます。

陽が陰り、夢中で飛ばしていた時間の長さを思わせます。9人全員が無事に飛ばすことができ、数時間ではありましたが、トップクラスの選手からの指導でかなり充実した経験を積めたと思います。そもそも屋外でこれだけ長時間のフライトができる環境は少なく、国交省の認定団体で求められている以上の水準の内容です。

そうは言ってもまだまだ不十分。「悔しい、もっと練習したい」という声も聞かれました。講師からも、まだ一人で飛ばすことは控えるべきとのアドバイスがあり、後日、練習できる機会を設ける予定だということでした。そして、上達には同じレベルの仲間の存在が重要で、交流を続けられるようにFacebookグループが用意されるそうです。自転車に突然乗れるようになるのと同じように、レース用ドローンの操縦もコツをつかむ瞬間が訪れるもので、それは遅い人でも丸1日あれば訪れるという講師の話に、希望を持ちました。

楽しく学べるよう工夫された講座

2日間を通して印象的だったのは、講座が楽しいものになるように、そして講座中も講座後も安全に過ごせるように、講師のみなさんが随所で気を配っていたことです。

安全は、ドローンにおいてとても重要なことです。特にレース用を自作する場合は、市販品とは違って設定や製作のミスが起こり得るので、注意を払う必要があります。しかも、レースに最適化させているため、安全に関わるセンサーや機構を省いており、フライトの場所には慎重になるべきです。

日本の法律では200g以上のドローンは「無人航空機」として航空法によって飛行方法などが定められています。今回製作したドローンを計量してみると500gほどありました。第三者の近くや人口密集地の屋外では、許可なく飛行させることはできません。

そして、どの講師も話していたのが、早くFPV(First Parson View/一人称目線)の世界を体験して欲しいとのこと。今回のドローンにはカメラを搭載していませんが、カメラを設置するためのスペースは設けてあります。ドローンレースではカメラの映像を無線でゴーグルに飛ばし、そのゴーグルを装着すればあたかも自分がドローンに乗っているかのように操縦することができます。それがFPV飛行と呼ばれるものです。自分の視界と操縦の向きが一致するので、早く覚えられるといいます。

50代の受講者の方が、こんな話をしてくれました。「昔から空への憧れがあったけれど、パラグライダーなどはもう年齢的に控えたい。それよりもFPVで自分が乗っているイメージでドローンを飛ばしてみたいんだ」と。私も今回の経験と製作した機体をベースにステップアップし、いずれドローンレースにチャレンジしてみたいと思います。

なお、FPVでレースに参加するためには、目視外飛行の許可申請と、アマチュア無線4級の取得が必要になります。これをクリアするための講座も、継続してレポートする予定です。

この記事を担当したライター/加藤学宏

ライターの加藤学宏です。文章の仕事と並行して、ドローンによる空撮や映像制作も手がけています。

空撮用の既製ドローンしか扱ったことがありませんでしたが、講座を通して触れたレース用ドローンやマイクロドローンの楽しさにハマっています!

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