ドローンレースを通じて、子供たちの将来をつくる――JAPRADAR上関竜矢代表インタビュー

数々のドローンレースで好成績を残してきたTEAM JAPRADAR。2019年前半では、小学5年生の上関風雅選手がJDL第2戦で最年少優勝を果たしたほか、JDRAの全国ドローンレース選手権の地区予選では風雅選手が優勝、同じく小学5年生の川田和輝選手が準優勝するなど、所属選手の目覚ましい活躍が続いています。

JAPRADARとは、どんなチームなのか。そして、何を目指しているのでしょうか。代表の上関竜矢さん、メカニックの門前龍汰さんへのインタビューをもとに、最速小学生を生んだレーシングチームの実態、そして新たに開拓したモータースポーツにおける空撮の可能性に迫ります。

3つの顔を持つJAPRADAR

――率直に伺いますが、JAPRADARとは一体、何なのでしょうか。

上関代表:いくつかの顔を持っています。1つめは、ドローンレーシングチームとして活動するJAPRADAR。現在は小学生から高校生まで4名の選手が所属しており、練習や大会でのサポート、アイテムの提供などを行っています。

JAPRADAR代表の上関竜矢さん

2つめは、ドローンレース用のバッテリーやフレーム、モーターといったアイテムを開発・販売するブランド名としての「JAPRADAR」です。子供たちのレーシングチームは、正確にはこのブランドのSUPPORT PILOTという位置づけ。支援する一方で、所属レーサーには貴重なデータやフィードバックを提供してもらい、それをアイテムの開発に取り入れる協力関係なんです。

そして3つめが、プロ空撮チームとしてのJAPRADARです。空撮のなかでも、特に注目して経験を積んできたのが、モータースポーツ。最近では、日本発で海外での人気も高い「ドリフト」での空撮で、レースの楽しみ方やドローン活用の可能性を広げる大きな動きもできつつあります。

それぞれは別の活動ではなく、三位一体でつながっています。

――まずは、これらの活動を始めることになった背景を伺いたいのですが、そもそも上関さんとドローンの出会いを教えてください

上関代表:私がもともと手がけている仕事は、大型印刷です。写真をプリントして看板に使用したり、車両の装飾にしたり。JAPRADARが活動で使用するキャンピングカーの装飾も、自分で印刷したものなんですよ。

全国をめぐるJAPRADARのキャンピングカー。ボディの装飾は、上関代表の仕事によるものだ

そんななか、建物の外観やゴルフ場を空撮して使いたいというニーズがあってDJI Phantomを導入しました。ドローンに携わるうちにレースにも興味を持ち始め、国内でもレースがあることを知って。最初は息子である風雅と純粋な趣味で参加しはじめて、レース歴は今年で3年目になります。本格的な活動を構想するようになり、2018年シーズンからTEAM JAPRADARとして参戦するようになりました。

人間性をはぐくみながら、空撮のプロを育成

――その構想とは、レースチームとしてはどのようなものでしょうか

上関代表:小学5年生の上関風雅、川田和輝。2019シーズンからは、高野奏多(小6)、小松良誠(高1)が加わり、合計4名が所属しています。レースで結果を出すのも目的ですが、その先には、空撮サービスに必要な技術を身につけてもらおうというテーマがあります。特殊な環境で飛ばせる技術は、そう簡単に身につくものではない。しかし今のうちから、技術はもちろん、準備や心構えなどを身につけていけば、20歳ですでに10年のキャリアを持つ実力者としてスタートを切れ、社会に貢献できるわけです。

――たしかに、とても価値のある人材として活躍しそうです

上関代表:でも、そのためにはレースで速いだけではダメなんですよ。JAPRADARの活動は、職業としての空撮パイロットに必要なテクニック、そして人間として大切な礼儀やコミュニケーション能力などを養う教育の場でもあるんです。

レースで失敗しても「負けてしまったな」で終わりますが、仕事として提供する空撮サービスで失敗は許されませんよね。このような大人の考え方を前提に、自分で準備し判断できる練習をしています。そのひとつが「点検シート」。フライト前に、機体の整備状態などを自分で責任をもってチェックするのですが、さらに他の親御さんと一緒にダブルチェックする仕組みにしています。このとき、普段は接点のない大人との会話が必要なので、コミュニケーションの教育にも役立つわけです。

彼らとともに全国を転戦するのが、代表の私とメカニックの門前龍汰さんです。また、アメリカの最新トレンドを取り入れた練習カリキュラムを作成してくれるのが、トレーニングマネージャーのアンディです。

メカニックの門前龍汰さん

門前さん:JDLのRound 2、福岡で開催されたレースで風雅選手が優勝しましたが、このとき私と上関代表には空撮の仕事があり、同行することができませんでした。機体を事前にセッティングしたのは私だったわけですが、レースから戻ってきた風雅選手は真っ先に「龍汰、ありがとう」といってくれました。12歳にして周囲に気遣い、感謝できるのは、大したものだと思いましたね。

上関代表:スポンサー企業のみなさんに支えられていることも、忘れてはなりません。そのおかげで、国内のチームとしては恵まれた活動ができるようになっています。

そして、チャレンジを理解して協力してくれる親御さんたち。おもちゃのラジコンを買い与えるような感覚では、とても活動できません。JAPRADARが支援しているとはいえ、やはりお金はかかりますし、休日は練習場へ送迎するなど献身的な協力に支えられているから、子供たちはレースを続けられるのです。

キャンピングカーの掃除をする上関風雅選手。ドローンレースは人格形成の場でもある

安心して使えるプロクラスの部品を供給

――レーサーたちのフィードバックが取り入れられた製品を供給するのも、JAPRADARの活動ということでしたが

上関代表:バッテリー、フレーム、モーターと、主要な部品については独自開発を行い、品質の証しであるロゴ入りの製品として、ネット通販でお届けしています。日々の練習で使われ、過酷な環境に耐え、そのデータを次の開発に活かしてきた製品です。プロクラスの選手が使っている安心感と性能を手に入れられ、気軽に質問できる身近なブランドとして利用してもらいたいですね。

JAPRADARのレーサーたちと同じパーツを手に入れられる

――最新のパーツを手にできるのは、JAPRADAR所属選手にとっても強みですね

門前さん:そう思われるのですが、実は、最新のパーツで組めば速いとも限りません。それよりも、慣れるまでは以前の機体のほうが速いものです。思い通りに操縦できるように、細かなチューニングを積み重ねているからです。ハードとしては同じセッティングでも、他人の機体を使うと、まったく飛ばせないほどです。メカニックとして選手の理想になるようセッティングするのですが、操作性や感触を言語化してフィードバックするのは、大人でも簡単ではない。小学生なら、なおさらのことです。感覚的な言葉から、どうくみ取るかが難しいですね。

――1回のレースで、何機ぐらい用意するものなのですか

門前さん:予備を合わせると、2人で10機を用意します。パーツが同じなのはもちろん、配線の長さや取り回しが少し違うだけでも影響があるので、細かいところまでできるだけ同じセットアップにします。JAPRADARのパーツをベースに、統一構成の機体を全員が使うことで、データをレース戦略に使いやくなります。

キャンピングカー内の壁にならぶドローン

新たな空撮シーン創出で活躍のフィールドが広がる

――もうひとつ、空撮チームとしての顔があります

上関代表:現在、パイロットを務める門前さんのほか、準メンバーのような形でCGや音楽、スチール撮影など各専門家が集まって総合的なクリエイションができるチームとなっています。ただ、いつもドローンを使っているわけではありませんし、レーサー機だけでなくDJIの機体を使用することもあります。ドローンは、いいアングルで撮るための手段のひとつであり、カメラを載せる装置にすぎません。その前提に立って考えることが大切だと思います。とはいえ、ドローンは映像の可能性を広げてくれるので、主戦力として期待していますよ。

最近の新たな可能性として、モータースポーツでドローン空撮が注目されていたのですが、観衆が違うアングルから楽しむという枠を超えた影響が起きています。JAPRADARは国際的なドリフト競技大会「FORMULA DRIFT JAPAN」のオフィシャル空撮チームとして活動しているのですが、空撮映像を見た審査員の発案で、審査に取り入れられることに。ドリフトはフィギアスケートのような採点競技なので、見えるアングルが多いほど正しく審査することができるからです。発煙で横から見えないシーンも多いのですが、上空からだと車体の動きをクリアな視界で追うことがきます。

迫力満点の動画が満載!YOUTUBEのJAPRADARチャンネルはこちら

――ファンが楽しむための映像を撮っていたのに、目的が変わってきはじめた

上関代表:そうなんです。ドリフトはアメリカでの人気が高く、競技大会としては本家にあたる「FORMULA DRIFT」があるのですが、まだドローンを取り入れた審査は行われていません。先日行われた日本でのレースにはアメリカの関係者も訪れていたのですが、ドローンの有効性を見て、さっそく議論を始めたそうです。日本から世界へ、ドローンの活用シーンが広がっています。

――それはすごいことですよね。ほかに、空撮の可能性が広がりそうな領域はありますか

上関代表:ドリフトについては、これまで装飾がない空きスペースだった屋根が注目されるようになるので、スポンサーの広告を入れようと考えるのではないでしょうか。チーム運営にとってプラスになるような、新たなビジネスチャンスを開拓するものです。新しい視点で、競技自体のルールが変わる可能性もあります。サーフィンにも使えそうですね。

このように、空撮の領域が広がるということは、空撮パイロットが活躍できる場所も増えていくということで、子供たちの将来がつくられることになります。ドローンの操縦技術も高まってきたので、そろそろ空撮に必要なカメラの扱いなどについても教えていく予定です。

――JAPRADARの3つの活動がつながっているという話は、こういうことだったんですね。最後に、JAPRADARとしてさらに手がけていきたい構想があれば教えてください

上関代表:日本ドローン協会のインストラクター資格を活かして、今後はドローン教室も始めたいと考えています。ただ飛ばせるようになることを目指すのではなく、空撮の仕事で得たリアルな経験を伝える教室です。例えば、飛ばしていい場所の判断は、電波が途切れやすい地形でないことなど複雑な考慮が必要で、法令を守るだけではできない。初心者には難しい判断ですよね。

上関代表の考えは、いつも子供たちの将来につながっている

それから、選手育成のすそ野を広げていきたいですね。JAPRADAR所属選手が好成績を残せば、いいパイロットがいるチームに入りたいと思う子供たちが増えるはず。そのとき、早く成長できる知見を提供して、また新たな知見として蓄えていく循環を作りたいです。上位クラスの選手として活躍できる技術を、早く習得できるサイクルを作ることで、成長カーブの角度を上げていきたいですね。

もうひとつ考えないといけないのは、ファンがたくさん付くレース大会を設計することです。ファンがいないと「業界」にはならない。現在は場所が限られていることもあって、開催団体のみなさんも苦労しているのだと思います。ファンに注目されると、憧れられる選手、職業レーサーが誕生します。よりよい大会を手がけると同時に、JAPRADARから憧れの選手をたくさん輩出し、さらに業界を発展させて「将来」を形づくっていきたいと考えています。

この記事を担当したライター/加藤学宏

ライターの加藤学宏です。文章の仕事と並行して、ドローンによる空撮や映像制作も手がけています。空撮用の既製ドローンしか扱ったことがありませんでしたが、講座を通して触れたレース用ドローンやマイクロドローンの楽しさにハマっています!

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